【開催報告】山田洋次監督特別講義を開催しました
平成30年6月27日、稲盛記念会館において、京都三大学の学生企画講演会「山田洋次監督特別講義『映画をつくる』」が開催されました。講演会は、企画学生から山田監督に質問を行い、山田監督にお答えいただくトークセッション方式で進められました。当日は、京都三大学(京都府立大学、京都工芸繊維大学、京都府立医科大学)の学生を中心に、大学生、教職員、府民の皆様など、200名を超える方にご参加いただき、立ち見も出る盛況となりました。
企画学生からはまず、映画作品の題材の入手方法や、問題意識を持ち続けるための方法について質問が出されました。山田監督からは、1970年公開の「家族」という作品が、当時、ある駅で偶然出会った家族の様子をヒントに作られたことや、「男はつらいよ」製作のきっかけについて、「寅さん」というキャラクターは、俳優の渥美清さんと面談した際に、渥美さんが落語家のように面白く、少年時代にテキ屋に憧れた話やテキ屋の口上の真似を披露してくれたことから思いつかれ、「渥美清さんの中から掘り当てた」と話されました。
山田監督の作品で描かれる「笑い」についての質問に対しては、「寅さんは教養もお金も地位もないが、周囲を笑いで勇気づけている。苦しく辛い思いをしている人を励ますのは、激励でも叱責でもなく笑いだ」と話されました。ご自身が戦後中国から引き上げた後、食べ物も仕事もお金もなく、中学校の学費を稼ぐためにやむを得ず闇市の仕事をした時のエピソードを披露され、先輩の同業者がとても面白い人で、いつも冗談を言って笑わせてくれたお陰で、辛い時も気持ちが明るくなり乗り切れたことや、「笑い」というのは「みんな同じ人間だ」という「共感」から生まれるとも話されました。
最後に戦争をテーマにした作品について質問が出されました。山田監督は、戦争時代に言論の自由がなかった経験から、「小さいおうち」では、そんな時代にも人間らしく美しく暮らしたい、人間とはそういうものだということを描きたかったと話されました。また、個人の自由、表現・思想の自由が大切であると同時に、他人の意見に耳を傾けられるということが重要であり、相手の言い分を聞き、議論をして、例え少数意見でも正しければ意見を変えていくことが民主主義であると話されました。
講義の最後に監督から大学生へのメッセージとして、「寅さん流に言えば、恋をしなさいということ。大学の4年間は、肉体的にも精神的にも人間の土台が作られるときであり、恋をして悩み、たくさん本を読んで映画を観て物事の原理や基本について考えて欲しい。その中から、世界がどうあらねばならないか、自分はどうやって生きていけばいいのかを学んで欲しい。より良く生きるってことは何だろう、自分という人間はどういう人間なんだろうと悩んだり考えたり、そのことについて先生に意見を聞いたりするのが大学だと思う。」と語られました。
本講義の開催にあたり、御協力くださいました、山田洋次監督をはじめとする関係者の皆様に改めて感謝申し上げます。